(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座小児成育外科学 教授)
小腸を切除した後の
からだの変化
小腸を切除すると水分や栄養素の吸収はどうなるの?
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小腸では、糖質、タンパク質、脂質が消化されるほか、ほとんどの栄養素が吸収されますが、栄養素の種類によって吸収される部位や量は異なります。したがって、短腸症候群の患者さんが吸収できる水分や栄養素の種類・量も、切除した小腸の長さや部位によって異なってきます。
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小腸を切除しても、残っている小腸の機能が改善して、栄養素の吸収能力を高めようとする変化がみられます。この変化を
腸管順応 と呼びます。
正常な小腸や大腸において各種栄養素が吸収される部位
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空腸では、ビタミンB12と胆汁酸を除く多くの栄養素が吸収されるため、空腸を切除した場合には栄養素の吸収がきわめて低下します。
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回腸を切除した場合には、ビタミンB12と胆汁酸の吸収が低下します。
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結腸を切除した場合は水分や電解質(Na、Mg、Kなど)の吸収が低下します。
腸管順応について
切除後に残った小腸ではどんな変化が起きているの?
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正常な小腸の壁には多くの輪状のヒダがあります。このヒダの粘膜には小さな突起(
絨毛 )があり、さらに絨毛の先端には微絨毛 と呼ばれる突起が密集しています。これら絨毛および微絨毛の存在により、ヒダの粘膜の表面積が増えて、水分や栄養素を効率よく吸収することができます。
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小腸が大量に切除されると、水分や栄養素を十分に吸収することができなくなります。そのため、残っている小腸では栄養素を吸収する能力を高めるために、腸管粘膜の表面積を増やすような構造的変化を起こします(これを腸管順応と呼びます)。
例えば、絨毛の高さを長く伸ばす、腸管の上皮細胞の数を増やす、血管新生(もともと存在していた血管から新しい血管が作り出されること)による血流の増加などといった変化がみられます。 -
腸管順応の変化は、生体内の成長ホルモンなどの増殖因子の刺激によって促進することが知られています。