(大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座小児成育外科学 教授)
短腸症候群の治療
治療目標は?
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小腸を大量に切除した直後は、小腸の吸収能が低下しているため、必要な栄養素や水分を補助するために中心静脈栄養(TPN)が必要となります。その後は、TPNを併用しながら、経腸栄養(EN)を導入していきます。最終的には、TPNから離脱することを目指します。
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腸管順応は、TPNから離脱するプロセスに不可欠な生理的変化です。
どんな治療法があるの?
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短腸症候群の治療法には、主に栄養療法、薬物療法、外科的治療、下痢などに対する対症療法があります。
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治療法は、患者さんの年齢、原因疾患、残っている小腸の状態などによって異なり、段階的および包括的な治療プログラムが必要となります。この治療プログラムの総称を、腸管リハビリテーションと呼んでいます。
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栄養療法
小腸を大量に切除した直後は、必要な栄養素や水分を補助するために、カテーテルなどを使って栄養剤を静脈に直接投与するTPNが行われます。その後、残っている小腸の腸管順応により小腸の機能が回復すれば、TPNの投与量を減らします。腸管順応が順調にすすめば、TPNを中止してENに移行できる場合もあります。
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薬物療法
短腸症候群の患者さんの切除した後に残っている小腸の腸管順応を促進し、栄養素や水分の吸収機能を改善することを目的に、ホルモン剤等を用いた薬物療法を行う場合があります。
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外科的治療
短腸症候群の患者さんでは小腸の吸収能を高めるために、腸管延長術や小腸移植といった外科的治療を行う場合があります。
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下痢などに対する対症療法
短腸症候群の患者さんでは、小腸の大量切除により下痢の症状がみられます。下痢の原因として、水分の吸収が不十分、腸運動の亢進、胃酸の過剰分泌、脂肪便(脂肪の吸収がうまくできない)、腸内細菌の異常増殖といったものがあり、これら個々の原因に応じた対症療法が行われます。